斜線堂有紀の2020年を語る

 

 あけましておめでとうございます。斜線堂有紀です。

 

 個人的な転機であった2020年を振り返る記事を書かないのもな、と思ったので書いておこうと思います。正直、目が回るほど忙しかった! 1月から12月までずっと走り続けていた気がします。本当に楽しかったです。支えてくださった読者の皆さん本当にありがとうございます。小説家になりたかったのは、毎日小説を書いていたいなと思ったからなのですが、その夢が叶っている現状以上に嬉しいことはないです。

 

 思い出深いのは、やはり楽園とは探偵の不在なりのランキング入りでしょうか。自分の好きな講談社ノベルスのあの空気を沢山オマージュした作品が評価して頂けたのが嬉しかったです。この小説は、高校生の自分が読んだら好きになるタイプの本格ミステリだろうと思いながら仕上げました。最終的に「ミステリが読みたい!」2位、「このミス」6位「文春ミステリランキング」3位、「2020本格ミステリ・ベスト10」4位でした。傾向の違うランキングで評価して頂けたことも嬉しい。こんなことがあっていいのか。かくありたい。

 ちなみに、ランキング入りを受けて紀伊國屋書店新宿本店さんでは斜線堂有紀おめでとうフェアをやって頂いています。こんなことが!? 


 ありがたくて伏して拝んでいます。紀伊國屋書店新宿本店さん、今年もよろしくお願いします。ところで、新宿の女神という肩書だったんですね。FGO出演が見えてきたな。

 あとは、今年は小説外の仕事も沢山ありました。2019年の「奉神軍紀に続き魔法少女には向かない職業」の漫画原作を担当しています。こちらはプロットの形で作画の片山先生にお渡ししているのですが、この仕事は毎月の原稿をこなしながら成長しているような状態なので、楽しくも大変です。この仕事を通して分かったことは、自分が情景を文章で想像する側の人間であることと、漫画的な絵作りと小説の絵作りがまるで違うことですね。自分は小説において地の文をかなり補完装置として使っているので、使えない場ではまた別の武器を用いなければならない。最初の読み切りや連載当初よりは確実に進歩しているので、更に学びつつ、小説にフィード出来るといいなと思います。

 地の文に頼れないといえば、今年は「神神化身」があって、これも個人的にはかなりの転機でした。というか、やったことがない仕事ですね。こちらでは、キャラクター設定から全て携わらせて頂いているので、色々な意味で特別なコンテンツです。これも小説とは別の主体としてボイスドラマがあるのですが、地の文が無い! なので、台詞とディレクションのみで意図を伝えなければならず、色々と悩むこともありました。小説家としては三年でも脚本家としては駆け出しなので……。
 その中でも、あれだけ完成度のものが作れたのは、偏にキャストの皆さんとプロデューサーさんのお陰です。感謝ですね。
 「神神化身」はお手紙などでも紙の本なら読みたいと言われる率が高いコンテンツなので、こう、三月の書籍版を楽しみにして頂けると嬉しい限りです。いや、歌も聴いて欲しいんですけどね!!

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 覇権を狙っていくぞ!! 完全にノリがラブライブ!になってきた。コンテンツの形態が似てますもんね。書籍版はSid。あるいは「ドームですよっ!ドームっっ!」
 そういうわけでボイスドラマや朗読など脚本を書かせて頂く機会が思いのほか多かったので、過去の名作舞台のアーカイブや脚本集を読んだりしていました。この方面も、もっと勉強しておくべきだったと痛感しました。ですが、今できる全力を出し切っていこうと思います。この『脚本』周りは神神化身以外にも、2021年にも色々とある予定なので──何なら早くにある予定なので、奮闘を見守ってください。小説以外も斜線堂作品は面白いですよ!

 と、小説以外の仕事の話ばかりしてしまいましたが、小説を一番書いた一年でもありました。小説家は依頼が無いと始まらないので、小説をいっぱい書いたということは依頼をいっぱい頂いたということなんですが、これが一番嬉しかったです。読者の方に恵まれた作家である自覚があるのですが、そうして皆さんが見つけてくれて、小説家にしてくださったんだな、と強く思います。大事なことは大体ラブライブ!で学び、スティグマアイマスで刻んだのですが『僕と君で来たよここまで みんなの想いが届いたよありがとう ついに一緒に来たよ楽しもう』(KiRa-KiRa Sensation!)感が凄いです。
 μ'sの初めてのCDって434枚という順風満帆とは呼べない売り上げだったんですけど、初期のファンの方が支えてくださってみんなで叶えた物語になったんですよね。私は自分の作家人生を振り返る時にいつもμ'sの道程を考えて、重ねてしまうんですよ。
 まだまだ全然目指す場所には辿り着いていないし、駆け出しなんですけど、今でさえ自分にとっては奇跡だと思っています。デビューから今まで、折れそうになったことが何度もあって、それでも小説家でいられたのは皆さんのお陰です。これは荒木比奈エッセイ(今読み直して気づいたんですけど、このエッセイ8,000超あるの? よく載ったな)でも言ったんですけど、私にとっての小説の神様でいてくださった皆さんに感謝しています。

 2021年も、楽しく夢を叶え続けていけたらな、と思います。
 1月8日には新刊「ゴールデンタイムの消費期限」が発売されますので、よろしければ2021年の斜線堂有紀をお手にとってみてください。
 自分が才能の話を書くとちょっとえぐい話になりがちだったのですが、そして今回もキツい部分は沢山あるのですが、今までとはちょっと違った物語になっていると思います。一つ言えることは、多分今の自分でなければこの物語は書けなかったし、肯定出来なかったということです。よろしければ、初めての『青春小説』をよろしくお願い致します。

 楽しく小説書きます。一生小説書くからね!!
 あとここを覗きに来ている出版関係の方はご依頼お待ちしています!!
 以下は雑記です。

 

 2020年の年末年始は「詐欺師は天使の顔をして」関連のあれこれで全然休めていなかったのと「恋に至る病」を詰めていたのでてんやわんやしていました。あと、2月のREADING×READINGやらもありましたね。そして2月に入ると「楽園とは探偵の不在なり」の初稿を書いたりしていて、更に修羅場を経験していました。恐ろしいですね。何が恐ろしいって3月の時点で「楽園~」の中身が全く出来てなかったこと。よく完成したものだと思います。頭の中で小説を書き続けるタイプなので、この辺りは脳の全てを「楽園~」に使っていました。そして四月の半ばに事件をまるごと取り替える暴挙に出る。そんな作り方をしていいのか? 死ぬぞ。その頃に神神化身のあれこれもやっていたのですが、色々詰めようとした結果の日の目を見ない没原稿が多い。


 そして「楽園~」二稿をやっている辺りで埋め部補遺集の初稿の〆切が来たので、大変な情緒で作業をしていました。秋口はまだ発表されていない某仕事で48時間に1度〆切が来るという、小説家が墜ちる地獄のような日々を送っていたので記憶が無いです。こうして修羅場の時は何で修羅場だったのか言えないのが歯がゆいですね。
 今年も今年で似たような年末年始だったので、のんびり正月番組を観てだらっと過ごす感じではなくなってきたのですが、これはこれで充実しているのだと思います。疫病が落ち着いたら旅行に行きたいですね。旅行先で小説を書くのが趣味だったので……。

 

 たまに健康を心配されますが、実は定期的に検査を受けているので安心です。赤血球と低血圧以外では引っかかりません。よかった。阿津川先生と焼肉を食べながら長生きするぞ~と約束したので、長生きします。共通の担当さんが「お二人、寝てます……?」と聞いてくるのに笑う。そこから心配しないでほしい。